60歳以上を対象とするRSウイルスワクチン

RSウイルスは、主に冬に流行する呼吸器感染症の原因ウイルスです。
多くの人にとっては軽い風邪症状ですみますが、乳幼児や高齢者、基礎疾患のある人は重症化することがあり、肺炎に至ることもあります。

日本でも60歳以上の成人において、年間約6.3万が入院し、そのうち約4,500人が死亡に至っていると推定されています。(1)

これまで、有効なワクチンが存在しませんでしたが、近年の研究開発により、60歳以上の高齢者を対象としたRSウイルスワクチン「アレックスビー」が実用化されました。
このワクチンは、60歳以上を対象とした臨床試験で優れた効果を示しています。
接種後1シーズン経過時点で、発症予防効果が82.6%、重症化予防効果が94.1%と高い有効性が認められました。(2)
さらに、2シーズン経過後も発症予防効果が約70%、重症化予防効果が約80%と持続的な効果が確認されています。(3)

他のワクチンと同様に、RSウイルスワクチンにも副反応の可能性があります。
一般的な副反応としては、接種部位の痛み・発赤・腫れ、頭痛、疲労感、筋肉痛、関節痛、発熱などがあります。
まれにアレルギー反応(蕁麻疹、呼吸困難など)が起こる可能性もありますが、臨床試験の結果から、重篤な副反応のリスクは低いことが確認されています。

特に、喘息、慢性閉塞性肺疾患、心疾患、糖尿病、慢性腎臓病などの基礎疾患がある方々は、RSウイルス感染により肺炎を合併するリスクが高くなります。
RSウイルスには特効薬がないことから、これらの方々にはワクチンによる予防が強く推奨されます。

RSウイルスワクチンは、高齢者や基礎疾患のある方々の健康を守る重要な手段となり得ます。
ワクチン接種を検討する際は、ご相談ください。

1. Savic M, Penders Y, Shi T, Branche A, Pirçon JY. Respiratory syncytial virus disease burden in adults aged 60 years and older in high-income countries: A systematic literature review and meta-analysis. Influenza Other Respir Viruses 2023;17:e13031.
2. Papi A, Ison MG, Langley JM et al. Respiratory Syncytial Virus Prefusion F Protein Vaccine in Older Adults. N Engl J Med 2023;388:595-608.
3. Ison MG, Papi A, Athan E et al. Efficacy and Safety of Respiratory Syncytial Virus (RSV) Prefusion F Protein Vaccine (RSVPreF3 OA) in Older Adults Over 2 RSV Seasons. Clin Infect Dis 2024;78:1732-1744.