健診で「悪玉コレステロールが高い」と言われた方へ― LDLコレステロールの目標値は人によって違います ―

健診でLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高いと言われたとき、どこまで下げればよいのでしょうか?

実は、LDLコレステロールは「140 mg/dLを超えたら、全員140未満にすればよい」というものではありません。

心筋梗塞や狭心症を起こしたことがある方、糖尿病や慢性腎臓病がある方、特に大きな病気がない方では、目指す値が異なります。さらに、年齢・性別・血圧などによっても目標は変わります。

要点まとめ

  • 「高いと判定される値」と「治療で目指す値」は別です。
  • 日本では、日本人のデータをもとに、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを評価して目標を決めます。〖1〗〖2〗
  • アメリカ・ヨーロッパでもリスクに応じて目標を変えますが、特に高リスクの方では日本より低いLDLコレステロールを目指すことがあります。〖5〗〖6〗
  • 当院では、日本のガイドラインを基本にしながら、すでに動脈硬化による病気を発症している方では、国内外の新しい知見も踏まえて目標を設定します。

「基準値」と「あなたの目標値」は同じではありません

日本動脈硬化学会では、LDLコレステロール140 mg/dL以上を高LDLコレステロール血症の診断基準としています。〖1〗

ただし、この140 mg/dLという数字は、すべての方の治療目標ではありません。

例えば、若く、ほかの危険因子がほとんどない方では160 mg/dL未満が目標になることがあります。一方、糖尿病がある方では120 mg/dL未満、心筋梗塞や狭心症がある方では70 mg/dL未満など、将来のリスクに応じて目標が変わります。〖1〗〖3〗

同じLDLコレステロール150 mg/dLでも、その意味は人によって大きく違います。

日本では「将来どのくらい病気を起こしやすいか」を考えます

日本のガイドラインでは、日本人を長期間追跡した久山町研究をもとに作られたリスク評価を用いて、将来の動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞の起こりやすさを考えます。〖1〗〖2〗

正式な評価では、年齢、性別、収縮期血圧(上の血圧)、LDLコレステロール、HDLコレステロール、血糖の状態、喫煙などを組み合わせます。〖1〗

その結果、心筋梗塞などをまだ発症していない方では、リスクに応じてLDLコレステロールの目標を160 mg/dL未満、140 mg/dL未満、120 mg/dL未満と段階的に設定します。〖1〗

医学的にはこのような総合評価が大切ですが、患者さんがご自身で毎回点数を計算するには少し複雑です。そのため当院では、ガイドラインの考え方から大きく外れない範囲で、患者さんにも分かりやすい形に整理してご説明しています。

日本・アメリカ・ヨーロッパでは、考え方が少し違います

LDLコレステロールを低く保つことが、動脈硬化による病気の予防につながるという基本的な考え方は共通しています。ただし、「誰を高リスクと考えるか」「どのくらいまで下げるか」には違いがあります。

日本 アメリカ ヨーロッパ
リスクの決め方 日本人の久山町研究をもとに、年齢・性別・血圧・脂質・血糖・喫煙などからリスクを評価します。〖1〗〖2〗 アメリカ心臓協会の心血管病リスク予測法(PREVENT)を用い、10年間、一部では30年間の心筋梗塞や脳卒中のリスクを評価します。〖5〗 ヨーロッパの心血管病リスク予測法(SCORE2/SCORE2-OP)などを用いて、リスクを段階的に評価します。〖6〗
心筋梗塞などをまだ起こしていない方 低リスクでは160未満、中リスクでは140未満、高リスクでは120未満が基本です。〖1〗 リスクが低い方では生活習慣改善を重視し、リスクが高くなるほど積極的な治療を行います。2026年版では、リスクに応じたLDLコレステロールの目標値が改めて明確に示されました。〖5〗 低リスクでも116未満が一つの目安です。リスクが高くなるにつれて、100、70、55未満と、より厳しい目標になります。〖6〗
糖尿病・腎臓病がある方 糖尿病や慢性腎臓病は高リスクとして扱います。糖尿病は基本120未満、腎臓・眼・神経の合併症などが加わる場合は100未満を考えます。〖1〗 糖尿病の状態、腎機能、合併症、全体の心血管病リスクをみて、より積極的な脂質低下治療を行います。〖5〗 糖尿病の期間、臓器障害、腎機能、ほかの危険因子などによって高リスク・非常に高リスクに分類し、より低い目標を設定します。〖6〗
心筋梗塞・狭心症がある方 日本の循環器領域では、動脈硬化による冠動脈疾患で70未満を目標とします。特に再発リスクが高い方では55未満を考慮します。〖3〗〖4〗 すでに動脈硬化による心血管病がある方は70未満、特に再発リスクが高い方では55未満が目標です。〖5〗 非常に高リスクと考え、原則55未満かつ治療前から50%以上の低下を目指します。〖6〗
特徴 日本人の発症率を反映した一次予防が特徴です。 一人ひとりの将来リスクを細かく評価して治療を決めます。 3地域の中では、特に高リスクの方で最も積極的にLDLコレステロールを下げる考え方です。
リスクの決め方
アメリカ
アメリカ心臓協会の心血管病リスク予測法(PREVENT)を用い、10年間、一部では30年間の心筋梗塞や脳卒中のリスクを評価します。〖5〗
ヨーロッパ
ヨーロッパの心血管病リスク予測法(SCORE2/SCORE2-OP)などを用いて、リスクを段階的に評価します。〖6〗
心筋梗塞などをまだ起こしていない方
アメリカ
リスクが低い方では生活習慣改善を重視し、リスクが高くなるほど積極的な治療を行います。2026年版では、リスクに応じたLDLコレステロールの目標値が改めて明確に示されました。〖5〗
ヨーロッパ
低リスクでも116未満が一つの目安です。リスクが高くなるにつれて、100、70、55未満と、より厳しい目標になります。〖6〗
糖尿病・腎臓病がある方
アメリカ
糖尿病の状態、腎機能、合併症、全体の心血管病リスクをみて、より積極的な脂質低下治療を行います。〖5〗
ヨーロッパ
糖尿病の期間、臓器障害、腎機能、ほかの危険因子などによって高リスク・非常に高リスクに分類し、より低い目標を設定します。〖6〗
心筋梗塞・狭心症がある方
アメリカ
すでに動脈硬化による心血管病がある方は70未満、特に再発リスクが高い方では55未満が目標です。〖5〗
ヨーロッパ
非常に高リスクと考え、原則55未満かつ治療前から50%以上の低下を目指します。〖6〗
特徴
アメリカ
一人ひとりの将来リスクを細かく評価して治療を決めます。
ヨーロッパ
3地域の中では、特に高リスクの方で最も積極的にLDLコレステロールを下げる考え方です。

※PREVENT、SCORE2/SCORE2-OPはいずれも、将来の心血管病リスクを予測する方法です。

では、日本人はどの基準を使えばよいのでしょうか?

当院では、心筋梗塞などをまだ起こしていない方では、日本人を対象としたデータに基づく日本のガイドラインを基本にしています。

欧米と日本では、心筋梗塞などの発症率や背景が同じではありません。そのため、欧米の目標値を日本人全員へそのまま当てはめるのではなく、日本人のリスク評価を土台にすることが自然だと考えています。〖1〗

一方で、すでに心筋梗塞・狭心症、明らかな動脈硬化が原因の脳梗塞、症状のある足の動脈硬化などを発症している方は、再発リスクが高くなります。このような方では、日本の循環器領域のガイドラインや最近の国内外の研究も踏まえ、より積極的にLDLコレステロールを下げます。〖3〗〖4〗〖5〗〖6〗

当院での基本的な考え方

  • まだ動脈硬化による病気を発症していない方:日本人のデータを重視して目標を設定
  • すでに動脈硬化による病気を発症している方:国内外の新しい知見も踏まえて、より厳格に管理

当院でのLDLコレステロール目標値

70 mg/dL未満を目標とする方

  • 心筋梗塞・狭心症
  • 脳梗塞(明らかな動脈硬化が原因)
  • 症状のある足の動脈硬化

これらは、すでに心臓・脳・足の血管に、動脈硬化による病気が現れている状態です。日本でも近年、脳や足の明らかな動脈硬化性疾患について、より積極的にLDLコレステロールを下げる考え方が示されています。〖3〗〖4〗

100 mg/dL未満を目標とする方

  • 脳梗塞・一過性脳虚血発作(上記を除く)
  • 家族性高コレステロール血症
  • 糖尿病があり、さらに次のいずれかがある方
    • 腎臓・眼・神経の合併症
    • 現在たばこを吸っている
    • 症状のない足の動脈硬化

120 mg/dL未満を目標とする方

  • 糖尿病
  • 慢性腎臓病
  • 症状のない足の動脈硬化

上記に当てはまらない方

心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、慢性腎臓病などがない方では、年齢・性別などから目標値を考えます。

年齢・性別 LDLコレステロールの目標
女性・60歳未満160 mg/dL未満
女性・60~79歳140 mg/dL未満
男性・50歳未満160 mg/dL未満
男性・50~69歳140 mg/dL未満
男性・70~79歳120 mg/dL未満
女性・60歳未満
160 mg/dL未満
女性・60~79歳
140 mg/dL未満
男性・50歳未満
160 mg/dL未満
男性・50~69歳
140 mg/dL未満
男性・70~79歳
120 mg/dL未満

血圧が高い場合や、ほかの危険因子が重なる場合には、年齢・性別による目安よりも低い目標値を設定することがあります。

80歳以上の方は、家族歴、健康状態、ほかの病気、治療状況などを考慮して、目標値を個別に設定します。

首の血管にプラークがある場合は?

頸動脈エコーで「プラーク(動脈硬化)があります」と言われることがあります。

ただし、プラークが見つかっただけで、自動的にLDLコレステロール70 mg/dL未満や120 mg/dL未満になるわけではありません。

プラークの大きさ、血管がどの程度狭くなっているか、プラークの性状、ほかの病気や危険因子などを合わせて判断します。〖1〗

LDLコレステロールが180 mg/dL以上の場合は?

未治療のLDLコレステロールが180 mg/dL以上と非常に高い場合には、年齢・性別による簡易的な目安だけで判断せず、家族性高コレステロール血症の可能性を確認します。〖1〗

若いころからLDLコレステロールが高い、家族にもコレステロールが高い方がいる、若くして心筋梗塞や狭心症を起こした家族がいる場合などは、特に注意が必要です。

目標値を超えていたら、すぐ薬を飲むのでしょうか?

目標値を超えていることと、すぐに薬を開始することは同じではありません。

心筋梗塞などをまだ起こしていない方では、まず食事、運動、体重管理などの生活習慣を見直し、その後の値や全体のリスクをみながら治療方針を決めます。

一方で、LDLコレステロールが非常に高い場合、家族性高コレステロール血症が疑われる場合、すでに動脈硬化による病気がある場合などは、早めに薬による治療を検討します。〖1〗

最後に

LDLコレステロールでは、「正常か異常か」だけでなく、「自分はどこまで下げる必要があるのか」を知ることが重要です。

同じLDLコレステロール150 mg/dLでも、若くほかの危険因子が少ない方と、心筋梗塞を起こしたことがある方では意味が大きく異なります。

当院では、日本のガイドラインを基本に、年齢、性別、血圧、糖尿病、腎臓病、心臓・脳・足の動脈硬化などを確認し、患者さん一人ひとりに合ったLDLコレステロールの目標値をご説明しています。

参考文献

  1. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版:動脈硬化性疾患予防のための包括的リスク管理.
  2. Honda T, Chen S, Hata J, et al. Development and Validation of a Risk Prediction Model for Atherosclerotic Cardiovascular Disease in Japanese Adults: The Hisayama Study. J Atheroscler Thromb. 2022;29:345-361.
  3. 日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会. 2022年 JCSガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療.
  4. Tanaka A, et al. Lipid Management for Secondary Prevention in Atherosclerotic Cardiovascular Disease: A Scientific Statement of the Japan Atherosclerosis Society. J Atheroscler Thromb. 2026;33.
  5. American College of Cardiology/American Heart Association. 2026 Guideline on the Management of Dyslipidemia.
  6. European Society of Cardiology/European Atherosclerosis Society. 2025 Focused Update of the 2019 ESC/EAS Guidelines for the Management of Dyslipidaemias.