院長が筆頭著者を務めた新しい論文がJACC: Cardiovascular Interventionsに掲載されました!

このたび、院長 原弘典が筆頭著者を務めた論文が、米国心臓病学会(ACC)の公式ジャーナルの一つであるJACC: Cardiovascular Interventionsに掲載されました。(1)
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jcin.2025.03.027


論文タイトルは

「Who Is the True High-Bleeding-Risk Patient?(誰が本当の高出血リスク患者か?)」

です。


この論文では、冠動脈ステント留置後に出血リスクが高いとされる患者群の定義とリスク予測のあり方について、最新の知見を踏まえた考察を行いました。


【研究の背景と目的】

ステント留置後の患者さんでは、抗血小板薬治療が続くため、出血リスクが重要な課題となります。
近年、ARC-HBR(Academic Research Consortium for High Bleeding Risk) や PRECISE-DAPT など、出血リスクを判定するための指標が提唱されてきましたが、これらの指標の精度や適用の限界については、まだ議論が続いています。

本論文では、院長が留学していた施設にて実施された大規模臨床試験 GLOBAL LEADERS試験 のデータを用い、既存スコアの妥当性と課題を検証しました。


【主な内容と結果】

GLOBAL LEADERS試験では、全患者(15,968名)のうち、
ARC-HBR基準では12.1%、PRECISE-DAPT基準では16.3%が高出血リスク(HBR)と分類されました。

ARC-HBRおよびPRECISE-DAPTスコアはいずれも、1年以内の重大な出血(BARC type 3-5)の予測性能が十分とはいえず、特にARC-HBRモデルでは出血リスクの過大推定がみられました。
一方、Limらによる大規模レジストリ研究では、実際の出血率が予測値(4%)を大きく上回る7.1%であったことが報告されております。(2)

研究間で異なる結果が出た背景には、

・登録患者の背景(例:過去の大出血歴の有無)
・使用された抗血小板治療レジメン(例:P2Y12阻害薬単剤療法の普及)

などの違いがあることが指摘しております。

今後は従来型スコアに頼るだけでなく、機械学習(Machine Learning) を活用することで、複雑な非線形関係を捉え、さらに治療レジメンの変化にも柔軟に対応できる、より精度の高いリスク予測モデルの構築が期待されることを提言しました。


【最後に】

本研究は、冠動脈疾患患者さんに対する治療選択の最適化に貢献できるものと考えております。

これまでにも、院長は、

・急性冠症候群(ACS)患者に対する5つのリスク予測モデルを比較検証。機械学習アプローチを用いたPRAISEスコアが、死亡・心筋梗塞・出血の予測に有用であること示し、機械学習アプローチの可能性を示唆した。(3)

・ARC-HBR基準に基づき高出血リスク患者における出血と血栓のリスクトレードオフを分析し、個別化された抗血栓療法の重要性を示した。(4)

といった、冠動脈疾患患者さんに対する治療選択の最適化を目指した研究に取りん組んできました。


今後も、最新の知見を臨床に還元し、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供できるよう努めてまいります。

ご興味のある方は、ぜひ論文本文もご覧いただけますと幸いです。


今後とも、当院をどうぞよろしくお願い申し上げます。



1. Hara H, Tsai TY, Onuma Y, Serruys PW. Who is the true high-bleeding-risk patient? JACC Cardiovasc Interv. 2025;18:1718–1719.

2. Lim CE, Simonsson M, Pasternak B, Jernberg T, Edgren G, Ueda P. Discordance and performance of the ARC-HBR and PRECISE-DAPT highbleeding risk definitions after coronary stenting. JACC Cardiovasc Interv.2025;18:637–650.

3. Hara H, O'Leary N, Ono M, Onuma Y, Serruys PW. A comparison of risk prediction models for patients with acute coronary syndromes. EuroIntervention. 2022;17:1-3.

4. Hara H, Ono M, Kawashima H, Onuma Y, Serruys PW. Trade-off betweenbleeding and thrombotic risk in patients with academic research consortiumfor high bleeding risk. JAMA Cardiol. 2021;6:1092–1094.