肺高血圧症における血管新生の仕組みと新規治療薬への期待

肺高血圧症は肺血管の進行性狭窄を特徴とし、肺動脈圧の上昇とともに呼吸・循環不全が進行する難治性疾患として知られております。
以前は診断からの平均生存期間が3年未満と非常に予後不良な病気でした。
近年は、エンドセリン経路、一酸化窒素経路、プロスタサイクリン経路に作用し、肺血管を拡張する治療薬が開発され、予後が改善してきているものの、肺移植を必要とする重症な患者さんも多く、新しい治療法の開発が望まれています。

今回、肺高血圧症に関する、院長が協力した論文が発表されました。

PGC-1α–mediated angiogenesis prevents pulmonary hypertension in mice

この論文の中で、


肺高血圧症の進展過程において血管新生が代償的な役割を担っていること
その血管新生は転写共役因子PGC-1αにより制御されていること

を明らかにしました
また、組織を透明化する技術と特殊な顕微鏡を用い、

マウスの肺内部の微小血管を3Dで可視化し、肺高血圧症の進展過程に特徴的な血管新生像を捉える

ことに成功しました。
これらの成果から、さらに、

PGC-1α活性化薬が血管新生が誘導することにより肺高血圧症を改善する

ことを明らかにしました。
今後、PGC-1α活性化薬は新たな肺高血圧の治療薬になることが期待されます。