エイコサペンタエン酸(EPA)

エイコサペンタエン酸(EPA)はコレステロールによいサプリメントとして一般販売されておりますが、医学的にも

 ・中性脂肪を下げる
 ・心血管イベントを軽減する
 ・血液をさらさらにする

効果が示されており、高脂血症に対する医薬品として認可されております。


1970年代に行われた疫学調査にて、魚やアザラシから主に脂肪を摂取していたグリーンランドのイヌイットが、心筋梗塞・狭心症による死亡率が極めて少ないことが分かりました。(1) 
魚やアザラシの脂肪にはEPAが多く含まれており、グリーンランドの人々の血中に不飽和脂肪酸であるEPAが高濃度に含まれていたことから、EPAが心臓病を予防するのではないかと期待されることになりました。

EPAが実際に心筋梗塞・狭心症などの冠動脈疾患を予防することを示したのが、日本で行われたJELIS試験になります。(2)  
この試験では、18,645人を対象にEPA (1,800 mg/日)を内服する人と、内服しない人とにランダムに振り分け、EPAの効果を検証しており、冠動脈疾患を約20%予防することがわかりました。
また、脳卒中の再発を20%減らすことも示されております。(3)

最近では、EPA 4,000 mg/日と高用量を投与した場合の効果が、REDUCE-IT試験(4)、EVAPORATE試験(5)などで詳細に検証されております。
特に、REDUCE-IT試験では約25%、冠動脈疾患を予防することが示されています。
EPAはいわし・さば・あじなどの青魚に多く含まれており、普段の食生活で十分という方もいるかと思います。
一方で、食生活によっては、サプリメントを内服していても、効果を得るには用量が十分でないこともあります(サプリメントでのEPAの用量は180〜1,250 mg/日程度となります)。

当院では、高脂血症の方に、動脈硬化の程度や病状に応じて、エイコサペンタエン酸(EPA)製剤の処方を行っております。
サプリメントを内服しているあるいは始めようと思っている方でも、気になることがあれば、ぜひご相談ください。


参考文献

1.	Dyerberg J, Bang HO, Stoffersen E, Moncada S, Vane JR. Eicosapentaenoic acid and prevention of thrombosis and atherosclerosis? Lancet 1978;2:117-9.
2.	Yokoyama M, Origasa H, Matsuzaki M et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet 2007;369:1090-8.
3.	Tanaka K, Ishikawa Y, Yokoyama M et al. Reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic acid for hypercholesterolemic patients: subanalysis of the JELIS trial. Stroke 2008;39:2052-8.
4.	Bhatt DL, Steg PG, Miller M et al. Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia. N Engl J Med 2019;380:11-22.
5.	Budoff MJ, Bhatt DL, Kinninger A et al. Effect of icosapent ethyl on progression of coronary atherosclerosis in patients with elevated triglycerides on statin therapy: final results of the EVAPORATE trial. Eur Heart J 2020;41:3925-3932.