心臓病を持っている方が歯科に行くとき
2023年5月10日
歯の健康は、生活の質(QOL)に欠かすことができず、虫歯や歯周病があれば、歯科で治療してもらうことは大切です。 その時に、心臓病の病気を持っている方ではいくつか注意点があるので、簡単にまとめてみました。
まず、歯科でよく行われる処置は、 ・抜歯などの口腔外科手術 ・歯周外科手術 ・インプラント手術 がありますが、これらは、医療関係者の間では、出血「低リスク」の手術として扱われます。 高リスクの手術が肝臓の切除など、中リスクの手術が胃の切除など、ですので、納得いただけるかと思います。 重要なのは、歯科の処置のように、出血「低リスク」で止血ができる(口の中で多少抵抗はあるかと思いますが、綿球などで押さえれば血が止められます)場合には、狭心症・心筋梗塞、心房細動に対して内服する 抗血小板薬:アスピリン(バイアスピリン)、クロピドグレル(プラビックス)、プラスグレル(エフィエント)など 抗凝固薬:ワーファリン、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、エドキサバン(リクシアナ) を中止せずに継続する ことが推奨されております。 これらは、心筋梗塞や脳梗塞の予防のために内服していることが多く、内服を継続し、少しでも心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げたほうよいとされているためです。 また、一部の心臓病を持つ患者さんでは、 ・抜歯などの口腔外科手術 ・歯周外科手術 ・インプラント手術 を行う時に、感染性心内膜炎という心臓の弁に細菌がつく病気を予防するために抗菌薬を内服することが勧められております。 高度リスクと言われる、 ・心臓弁膜症の手術をした方 ・感染性心内膜炎を発症したことがある方 などで強く抗菌薬の内服が推奨されておりますが、閉塞性肥大型心筋症や心臓弁膜症の程度によっても内服を検討する必要があります。 最近の研究でも、高度リスク患者では、抜歯の時に抗菌薬を内服することで、感染性心内膜炎になるリスクをなんと1/10以下にすることができることが示されております。(1)
感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドラインから抜粋 https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_nakatani_h.pdf 治療するかどうかはわからないけど、歯科に行く予定があるという段階でも相談いただければアドバイスをすることができます。 歯科に行った際に、「内科の先生に治療していいか相談してきてください」となるよりは、内科の先生から、「薬はそのままで治療していいと言われました」や「歯を抜くのであれば、抗菌薬を内服するように言われました」と話ができたほうが、治療もスムーズに進むと思っております。 参考文献 1. Thornhill MH, Gibson TB, Yoon F et al. Antibiotic Prophylaxis Against Infective Endocarditis Before Invasive Dental Procedures. J Am Coll Cardiol 2022;80:1029-1041.